シンママのキャリア形成~その場しのぎではなく、長期的にキャリアを考える
シンママライフ編集部です。
キャリアコンサルタントとして様々な活動を展開しているキャリコンサロン所属の中川倫子さんのお話第2弾です。
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今回は悩み多きシンママから様々な相談を受けてきた経験をもとに、彼女たちのキャリア形成について具体的なアドバイスや提案をいただきました。
多様な働き方が可能な時代。公的援助や就労支援もどんどん利用してください!
―シンママになって、まずはどのようにキャリアの道を開いていけばいいのでしょうか?
近年は働き方が多様化してきていますよね。時短勤務への理解や、テレワークやリモートワークのように場所に縛られずに働くことも可能になってきました。子育てをしながら仕事をすることが昔よりやりやすくなってきている印象です。仕事と子育ての両立はシンママに限らず全ての働くママたちの共通のテーマではないでしょうか。一概にシンママと言ってもそれまで仕事をしていた方から主婦だった方までいろいろだと思うのですが、一人で何もかも抱え込まずに周囲に現状を伝えSOSを出すことが大事なのではないかなと思っております。シンママに対する公的援助や就労支援は充実してきているので、役所の窓口でも友人でも自分に必要な情報には積極的にアプローチしてみてください。シンママだということで負い目を感じる必要は一切ないと思います。ご自身のこと、お子さんのことを一生懸命考え抜いて出された結論、決断できた勇気…本当に私は凄いと思います。責任感が強い方ほど、ご自身で全てを背負いこんで孤軍奮闘されてしまいますが、困ったときにはオープンに「誰か助けて」と言う勇気をぜひ持ってください。伝えてもらえることによって、必要になる情報を得たり、保育園や学校でのお子さんの様子をさり気なくお友達の親子経由で教えてもらえたり、短い時間でもお子さんを預かってもらえたりと、1人1人ができることは小さくても、集まったら大きな手助けになるかもしれません。
シンママの事情はそれぞれでも、一様に言えることはみんな子供ファースト
―シンママの一番の心配としては、どのようなことがあるのでしょうか?
私は今までたくさんのシンママの方からご相談を受けてきました。彼女たちがシンママになったのにはそれぞれに深い事情があるのですが、その時にご自身が受けた傷や痛みに対してはみなさんほとんど気にされていなくて、自分よりもまずはお子さんの心のことを第一に考えていらっしゃいます。物理的な生活の心配に加えて子供の心の問題までも引き受けて、本当にシンママには多くの負担がかかっています。父親がいないことで子供が受ける心の傷や偏見などを自分の責任と感じてしまっているようです。本当はご自身も傷ついているにも関わらず、自分を労わることができていない。自分のケアをもっともっとしてください、と強く思いますね。
“楽しい”を入り口に、その人の適性をアドバイス
―シンママからのキャリア相談もたくさん受けていると思いますが、今まで印象に残った事例としてどのようなものがありましたか?
これは離婚をした知人の話なのですが、とにかく離婚直後の彼女は心身ともにボロボロでした。離婚をするまでは専業主婦だったので働くイメージも湧かない。ご自身の強みにも気づいていない。でも生活のためには働かなくてはいけないという状況なので、まず彼女に「何をやっている時が一番楽しい?」と聞きました。そうしたら「人の世話をしているときが楽しい」との答えが返ってきたのです。確かに彼女は世話焼きで、困った人にすっと手を差し伸べることができるタイプの人でした。それから私は彼女に人のお世話をするような対人支援の職種をいくつか説明しました。その中の1つ介護の仕事に興味を持ち、彼女は未経験でしたが果敢にチャレンジをし、今では一人前の介護士となり正社員として働いています。働き始めてからの彼女は見違えるように生き生きとし始めました。自分が接する利用者さんの笑顔が嬉しい、体力面で時に疲れてしまうこともあるけど、手に職もついて嬉しいし、何より子供を養っていける自信が少しずつだけどついてきた、と嬉しそうに語ってくれました。
その場しのぎではなく、長期的にキャリアを考える
―シンママがキャリアを考えるにあたって、アドバイスはありますか?
シンママは経済的な心配が何よりも大きいかと思います。キャリア形成といった次元の話ではなく、まず明日の生活をどうするか。そんな切迫した状況の中では、目先の条件や時給に惑わされて短絡的な思考で仕事を選んでしまうのも無理のないことと思います。ですが、それは長期的視点で考えるとあまりお勧めはできません。体力的にも長く続けられ、しっかりとキャリアを積めるお仕事を探すことが長い目で見ると得策なのではないでしょうか。例えば看護助手や介護福祉士などは資格取得の支援が充実しているので、未経験者でもチャレンジしやすいお仕事です。看護助手から経験を積み、お金や時間に余裕が生まれてきた頃に、看護師資格取得にチャレンジする道も作ることができます。医療業界や介護業界は慢性的に人手不足なので、年齢を重ねても需要はあると思います。また最近では軽貨物の配送や家事代行などのニーズも増えてきていますね。軽貨物配送は自分のペースでできる上に、運転する車も軽車両なので女性でも運転しやすいですし、女性らしい気配りを活かせるお仕事だと思います。オフィスや家の玄関を空けたら、にっこり笑顔の女性が届けてくれる荷物って、嬉しくありませんか?また、家事代行をしながら在宅ワークをする等、ダブルワークをしてお子さんとの時間を確保されている方もいらっしゃいます。 “母は強し”と言いますが、シンママは子供のために頑張らなくてはという強い気負いをお持ちです。本当にすごいパワーを持っている方が多くて心底尊敬しています。応援してくれるパートナーがいないということは、心細いこともあるかもしれませんが、逆の視点で考えると、ご自身がやりたいと思っていること、進みたい道に反対するパートナーもいないという見方もできるのではないでしょうか。是非、将来を見据えてご自身に合ったお仕事にチャレンジしていただきたいですし、お子さんだけではなくご自身の人生も大切に「ありたい姿」を描いていただければと思います。
自分を褒める、人も褒める
―1人で何役もこなすシンママは心身ともに負担が大きいかと。これについて、何かアドバイスはありますか?
世の中頑張り屋さんが多いなと常々感じているのですが…特にシンママは朝から晩まで仕事や家事育児に追われ、自分のことを考えたり自分のために何かをやったりする時間がほとんどないのではないかと思います。そして頑張り屋さんに限って、みなさん一様に自己評価が低いような気がします。でも私から見れば、毎日食事を作り、掃除洗濯をし、そのうえさらに仕事にも行っているということは、ものすごいことだと思います。無意識のうちにやっていることでも実はすごいことなんだと自信をもって、そして自分を褒めて、ねぎらって欲しいですね。またこれは持論なのですが、人には素敵な面が必ずあり、それに本人が気付いていないことが多いと思うのです。なので、私は人の素敵な面を見つけたら積極的に伝えるようにしています。「あなたのここが素敵だよ」と伝えることで人間関係が潤滑になることもありますし、相手を褒めると、実は自分の脳内からオキシトシンが分泌され、心理面からも健康面からも良好な状態になるんですよ。お互いを認め合う・褒め合うことで世の中が回ったら今より「生きづらさ」の少ない社会になるのではないでしょうか。人生は苦しい時もあれば楽しい時もあると思います。そんな中でお子様の存在は大きな励みとエネルギーになると思います。頑張るご自身をいっぱい褒めて、ねぎらって、今しかないシンママライフを楽しんでください。